
スラヴ神話には、壮大な神々の戦いや英雄たちの冒険だけでなく、ユーモアや意外な展開を含むエピソードも数多く残されています。今回は、その中でも特に面白い3つのエピソードを紹介します!
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スラヴ神話の有名な魔女、バーバ・ヤガー。彼女は恐ろしい姿をした魔女として知られていますが、時にはとんでもない相手に出会ってしまうこともありました。
ある日、一人の旅人が森の奥に迷い込み、バーバ・ヤガーの住む鶏の足を持つ小屋にたどり着きます。普通の人なら恐怖に震えながら逃げ出すところですが、この旅人は違いました。
「おばあさん、お腹が空いたんだけど、何か食べ物はない?」
と、まるで親戚の家にでも来たかのように話しかけたのです。
バーバ・ヤガーは呆れながらも
「お前を食べてやろうか?」
と脅しますが、旅人は動じません。
「おばあさん、食べる前にちょっとスープでも作ってくれないか?」
と言いながら、暖炉の前に座ってくつろぎ始めたのです。
結局、バーバ・ヤガーはこの旅人の図々しさに負け、食べるのをやめてしまいました。それどころか、彼に食事を振る舞い、最終的にはお宝まで持たせて送り出したというのです。勇敢なのか、それともただ鈍感なのか…まさにスラヴ神話ならではの奇妙で面白いエピソードですね!
スラヴ神話には、雷神ペルーンと大地と冥界を司るヴェレスという二柱の神が登場します。この二人は天と地を象徴する存在で、神話の中では宿敵として描かれることが多いのですが、時には思わず笑ってしまうようなイタズラ合戦を繰り広げることもありました。
ある日、ヴェレスがこっそりペルーンの神殿に忍び込み、神聖な斧を盗んでしまいました。この斧はペルーンの力の象徴であり、彼にとってはなくてはならないものです。
しかし、ヴェレスはそれを持って森の奥へ逃げ込み、こっそりと人間に変身して村の市(いち)に現れ
「珍しい斧だろう?ちょっとした呪いがかかっているけど、いい値段で売るよ!」
と商売を始めたのです。
もちろん、ペルーンはすぐに気付き、雷を落としながら村へと駆けつけました。しかし、ヴェレスはすばやく変身を繰り返し、魚になったり鳥になったりして逃げ回ります。ついには牛の姿に化けて村人の中に紛れ込んでしまい、ペルーンはどれがヴェレスなのかわからなくなってしまいました。
結局、ペルーンは
「仕方がない、ヴェレスよ、斧を返せ!」
と叫び、ヴェレスも笑いながら
「わかった、わかった、でも今度はこっちが勝ちだな!」
と言って斧を返しました。このエピソードは、ペルーンとヴェレスのライバル関係を象徴するだけでなく、神々ですらイタズラをすることがあるという、スラヴ神話の遊び心を感じさせるものとなっています!
スラヴ神話に登場する家の精霊「ドモヴォイ」は、家を守る存在として知られています。普段は人間の目に見えない存在ですが、家族の暮らしを見守り、助けてくれることもあります。しかし、時にはその親切心がちょっと迷惑な方向に向かうこともあるのです。
ある農夫の家には、特に世話焼きなドモヴォイが住んでいました。彼は夜中になると家中を掃除し、家畜の世話をし、さらには農具を磨くという、まさに理想の家の守護者でした。しかし、問題は「やりすぎる」ことでした。
ある朝、農夫が目を覚ますと、家の中がピカピカに掃除されているだけでなく、畑まで勝手に耕され、作物が別の場所に植え替えられていました。さらに、家畜がすべて別の小屋に移されており、農夫はどこに何があるのかさっぱりわからなくなってしまったのです。
困った農夫は
「ドモヴォイよ、ありがたいんだけど、もうちょっと手加減してくれ!」
と声をかけました。すると、その晩からドモヴォイは少し控えめになり、農夫が起きている間はおとなしくするようになったと言われています。
スラヴの精霊は、時に人間にとって厄介な存在になることもありますが、基本的には家や家族を守ろうとする親切心の持ち主なのです。ドモヴォイのちょっと迷惑な愛情が感じられる、微笑ましいエピソードですね!
スラヴ神話には、神々や精霊、英雄たちが繰り広げる壮大な物語がある一方で、ユーモアや意外な展開を含む面白いエピソードも数多く存在します。魔女を驚かせる旅人、イタズラ好きな神々、世話焼きすぎる精霊など、どこか親しみやすいキャラクターたちが登場するのも、スラヴ神話の魅力の一つですね!