スラヴ神話で「夢」にまつわるエピソードとは?

スラヴ神話では、「」は単なる幻想ではなく、神々や精霊、死者の魂が人間にメッセージを伝える手段と考えられていました。夢は未来を予知したり、悪しき力が人間の精神を操る手段となったりするのです。今回は、スラヴ神話に登場する夢に関するエピソードを紹介します!

 

 

ノチニツァ—悪夢を運ぶ夜の精霊

スラヴ神話には、夢に入り込んで人間を苦しめる精霊「ノチニツァ」が登場します。特に子どもを狙うとされ、夜中に忍び込み、悪夢を見せたり、息苦しくさせたりする存在です。

 

あらすじ

ある村で、毎晩悪夢にうなされる子どもがいました。母親は心配になり、村の長老に相談しました。すると長老は「ノチニツァがこの子に取り憑いているのかもしれない」と言い、魔除けの儀式を行うことを勧めました。

 

そこで母親は、

 

  • 子どもの枕元に鉄の針を置く
  • ドアに聖なる印を刻む
  • 窓辺に魔除けのハーブを吊るす

 

といった対策を行いました。その夜、ノチニツァは子どもの夢に現れましたが、鉄の針の力によって追い払われ、二度と戻ることはなかったといいます。

 

この伝説は、スラヴの人々が「夢はただの幻ではなく、霊的な存在が関与するもの」と考えていたことを示していますね。

 

夢で神託を受けた英雄イリヤー・ムーロメツ

スラヴ神話最強の英雄、イリヤー・ムーロメツは、夢の中で神託を受け、その運命を大きく変えたとされています。

 

あらすじ

イリヤーは生まれつき病弱で、30年間も寝たきりの状態でした。しかし、ある日、彼のもとに3人の巡礼者が訪れます。

 

巡礼者たちは、「お前の運命は、ここで終わるものではない。お前は偉大な戦士となるだろう」と告げ、彼に神秘的な水を授けました。

 

イリヤーがそれを飲むと、彼は眠りに落ち、夢の中で雷神ペルーンの声を聞きます。

 

「キエフのために戦え。お前の剣は正義のために振るわれるのだ。」

 

目を覚ますと、彼の身体は完全に回復し、並外れた力を手に入れていました。そして、そのまま剣を取り、英雄としての道を歩み始めたのです。

 

このエピソードは、「夢が運命を決める」スラヴ神話の特徴をよく表していますね。

 

死者の魂が夢に現れる「予知夢」

スラヴ神話では、死者の魂が夢に現れ、未来の出来事を警告することがあると信じられていました。特に、祖先の魂は家族を守る存在とされ、重要な決断の前に夢の中で助言を与えることがあったのです。

 

あらすじ

ある若者が、戦争に行くべきかどうか悩んでいました。その夜、彼の夢に亡き祖父が現れ、こう告げます。

 

「もし西へ進めば、大きな栄光を手にするだろう。しかし東へ進めば、命を落とすことになる。」

 

若者は目を覚ますと、祖父の言葉を信じて西へ進むことを決意しました。そして、最終的に戦で大きな勝利を収め、祖国に名を残す英雄となったのです。

 

この話は、スラヴの人々が夢を「神々や死者の世界と繋がる窓」として重視していたことを示していますね。

 

 

 

スラヴ神話における「夢」は、神々や精霊、死者の魂が人間にメッセージを送る神秘的な手段と考えられていました。悪夢をもたらす精霊ノチニツァ、英雄イリヤー・ムーロメツの夢の神託、死者の魂が未来を予知する夢など、スラヴの人々は夢を単なる幻想ではなく、運命を左右する重要な存在として捉えていたのです!