スラヴ神話の「復讐」にまつわるエピソードとは?

スラヴ神話において、「復讐」は単なる怒りや報復ではなく、正義を取り戻すための行為として描かれることが多いです。神々や英雄たちは、不正や裏切りに対して容赦なく罰を与えますが、それは秩序やバランスを保つためのものでもあります。今回は、スラヴ神話における「復讐」にまつわる3つのエピソードを紹介します!

 

 

雷神ペルーンの怒り—ヴェレスへの復讐

スラヴ神話の最高神である雷神ペルーンは、冥界と大地の神ヴェレスと長年にわたり敵対関係にありました。特に、ヴェレスが天界を侵し、神々の宝を奪った時、ペルーンの怒りは頂点に達しました。

 

あらすじ

ある日、ヴェレスは天界に忍び込み、ペルーンの聖なる家畜や宝物を奪い去りました。それだけでなく、豊穣を司る女神マコーシュをさらい、冥界へと連れ去ったのです。

 

ペルーンよ、俺の力を見せてやる。天の神は地の神に勝てるのか?

 

激怒したペルーンは、雷鳴とともにヴェレスを追いました。しかし、ヴェレスは蛇や獣の姿に変身し、大地や川に身を隠して逃げ続けました。ペルーンは雷を投げつけ、森を焼き払い、山々を揺るがせながらヴェレスを追い詰めていきます。

 

最終的にヴェレスは行き場を失い、本来の姿を現しました。ペルーンは雷の一撃で彼を打ち倒し、奪われた宝と女神を取り戻したのです。しかし、ヴェレスは完全に滅びることなく、時が経つと再び力を蓄え、戦いを繰り返すことになります。

 

このエピソードは、「秩序を乱す者には必ず罰が下る」というスラヴ神話の基本的な世界観を象徴していますね!

 

ルサルカの悲しき復讐

スラヴ神話に登場する水の精霊「ルサルカ」は、悲劇的な死を遂げた女性が変化した存在とされています。彼女たちは裏切りや暴力の犠牲者であり、その無念を晴らすために復讐を遂げることがあります。

 

あらすじ

ある村に、美しく純粋な娘がいました。彼女は裕福な貴族に見初められ、結婚を誓いました。しかし、貴族は彼女を弄び、約束を破棄して別の女性と結婚してしまいます。絶望した娘は、深い悲しみのうちに川へと身を投げ、その魂はルサルカへと変わったのです。

 

それからしばらくして、裏切った貴族が何も知らずに川辺を馬で通りかかりました。その時、霧の中から美しい歌声が響いてきたのです。

 

愛しい人よ、なぜ私を忘れたの?

 

歌声に誘われるように、貴族は川へと近づいていきました。すると、透き通るような白い手が水面から伸び、彼を優しく抱き寄せました。しかし、次の瞬間、その手は鋭い爪へと変わり、彼の体を水の中へと引きずり込んだのです。

 

それ以来、その川では満月の夜になると、遠くから女性のすすり泣く声が聞こえるようになったと言われています。

 

この物語は、「裏切りは必ず報いを受ける」という教訓を含んでおり、スラヴの民間伝承において特に有名な復讐譚の一つですね!

 

裏切り者を討った英雄イリヤー・ムーロメツ

スラヴ神話の英雄イリヤー・ムーロメツは、多くの戦いにおいて祖国を守る役割を果たしました。その中でも特に有名なのが、彼が裏切り者に対して復讐を遂げたエピソードです。

 

あらすじ

キエフの宮廷には、イリヤー・ムーロメツと並ぶ強大な戦士がいました。しかし、この戦士は王を裏切り、敵と通じてキエフを危機に陥れようとしていました。イリヤーは彼の不穏な動きを察知し、警告を発しましたが、裏切り者はそれを無視し、ついに敵軍を城門へと導いたのです。

 

キエフの守護者たちよ、城を明け渡せ! さもなくば、お前たちの町は炎に包まれるだろう!

 

しかし、その瞬間、イリヤー・ムーロメツが姿を現しました。彼は一騎当千の力を発揮し、敵軍を蹴散らし、ついに裏切り者と対峙します。

 

祖国を売る者には、容赦しない!

 

激しい戦いの末、イリヤーは裏切り者を討ち取り、キエフを救いました。彼の忠誠心と正義の心は、多くの人々に称えられ、彼はスラヴ民族の英雄として語り継がれることになったのです。

 

このエピソードは、「裏切り者は必ず裁かれる」というスラヴ神話の価値観を色濃く反映した英雄譚ですね!

 

 

 

スラヴ神話における「復讐」は、単なる怒りではなく、正義や秩序を取り戻すためのものとして描かれています。雷神ペルーンのヴェレス討伐、裏切られたルサルカの復讐、イリヤー・ムーロメツの正義の戦いなど、それぞれの物語にはスラヴ民族の価値観が反映されており、悪しき行いには必ず報いがあることを伝えているのです!